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我が家の猫住(獣)民と常連たち 投稿

 我が家の猫集団 – 猫住(獣)民と常連達にまつわる話

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猫屋敷になった経緯その4 - 取り残された二匹

シーザーが我が家の一員になってから5年間は住(獣)民5匹の比較的平穏な“禁足”生活が続いていたが、その間にも我が家の裏庭では外猫や常連猫たちの顔ぶれが時と共に移り変わっていった。
当時(2006年前後)2~3匹の半野良猫たちが裏庭の猫小屋に住み着いており、幸いにもお互いに辛抱し合いながら何とか上手くやっていた。だが、いつの間にかそこに短毛の幾分大柄なサビ猫が出没するようになり、ちょっとした混乱をもたらし始めた。そのサビ猫は人懐こい訳ではないが人間を恐れず、また定住の猫達に対しても遠慮なく振舞って猫小屋の一つを占領し昼寝三昧したり、彼らが食事中でも平然と餌箱に近付いたりするようになった。山盛りの餌をぺろりと平らげ、それでも食い足りない様子で餌箱の前に鎮座しているので、「これはひょっとして…?」と思ったら案の定そのサビ猫の腹はみるみるうちに膨れ上がり、数週間後には裏庭にある納屋の下で出産していた。(先住猫たちへの配慮から)あまり気は進まなかったが、育児部屋が必要だろうと考え、納屋の横に毛の古着を敷き詰めた猫小屋を一つ置いてやったところ母猫はすぐにそこへ子猫たちを運び込み子育てを始めた。子猫が離乳するまで出来るだけその育児小屋に近付くことを避け様子を見ていると、そのうち母猫が子供達を置いてちょくちょく留守をするようになった。
ある日フリーダ (サビ母猫の名前) が不在の隙を狙って育児小屋の中を覗いてみると、そこにはまるでドブネズミのような風貌をした灰色の子猫一匹と三匹の黒っぽい子猫(二匹はサビ猫)がいた。しばらく彼らを見ていたがサビ猫の一匹が全く動かない。すでに絶命しているのは明らかだったため小屋からその子猫の死骸を取り出し、後で庭の片隅に埋葬してやった。翌日、気付けば子猫達は納屋の下に移されていて二、三週間ほど彼らの姿を見かけなかったが、いつの間にか親子揃ってまた育児小屋に戻っていたようだった。やがて離乳期が来たのか三匹の子猫達はチョロチョロ庭に出て来てあちこちを探索したり、外猫達の残飯を漁ったりし始めた。おかげで外猫達は恐怖におののき裏庭の猫小屋で寝泊りすることを避けるようになってしまった。このままあの子猫達を放置する訳にはいかない、そろそろ捕獲どきか。そう思って子猫用の餌を庭先に置き機会を狙った。
数日後、子猫達が餌箱を目がけて走って来るのを見かけたので庭に出てそっと近付いてみたが、餌を無心に食らう灰色の子猫とサビ子猫は逃げ出す気配が微塵もない。(いつの間にか黒い子猫の姿はどこかに消えていた。) 「親から引き離すには時期尚早かもしれないが、一度捕獲に失敗するとしばらくはチャンスを得られないだろうから早めに実行すべきか」などと考えながら一寸躊躇していたが、どうやら母猫は付近にいないようだし一か八かやってみようということで背後から二匹の子猫達に歩み寄った。彼らは(忍び寄る危険)こちらの動きに全く気付かず呑気に餌をむさぼっている。すばやく片手に一匹ずつ鷲掴みにして家の中へ駆け込み、とりあえず子猫達を籠に放り込む。さて、黒子猫はどうしたものか。あまり期待せず再度庭に出て辺りを見回してみたところ片隅の草むらに恐怖で固まっている黒い生命体を発見。素手で捕まえるには困難な状況であったため、とっさに着ていた上着を脱ぎ子猫の上に覆いかぶせた。幸いにも()子猫は石のように身じろぎ一つしない。してやったりとばかりに子猫を上着に包み込み持ち上げて振り向いたその時、目の前に母猫が現れた。彼女は狼狽の面持ちでこちらを睨み低い唸り声を発している。「まずい、跳びかかられたらシャレにならん」と、目をそらし冷や冷やしながら初めは抜き足差し足忍び足、後は駆け足でその場から逃れた。母猫はこちらに向かって何歩か近付いて来たが攻撃を仕掛ける様子もなく、ただ我々(筆者と黒子猫)の後姿を見送っていただけだった。こうして首尾よくネコババした三匹の子猫達を急設された我が家の隔離部屋に収容したのは2006年5月末の事である。
保護したものの、我々はその子猫達を飼うつもりは無かったため、彼らを隔離する間受け入れ先探しに奔走したがどこも空振りで、なかなか適切な候補を見つけることが出来ずにいた。そんなある日ひょんなことからサビ猫が玉の輿に乗って(推測)突然我が家を去り、オスの黒猫とメスの灰色猫二匹が後に残された。さらに数週間が経過したが、二匹の引き取り手が現れる気配はない。彼らは次第に大きくなり、孤立状態にしていつまでも狭い部屋に閉じ込めておくわけにはいかなくなった。やむを得ず、収容から2ヶ月半後二匹の子猫達を狼の群れ(先住内猫たち)の中に解き放ったのだった。彼らが家族の一員として認められたのはそれから更に数ヶ月経ってからで、結局当家は猫7匹の大所帯になってしまった。やれやれ
子猫達を捕獲後しばらくしてからサビ母猫も罠で捕らえ、避妊手術を受けさせてまた外に放してやったが、それからは(彼女は) 餌目的で時々裏庭に姿を見せるだけになった。三匹の子猫達がウロチョロしていた間猫小屋での寝泊りを敬遠していた外猫達は程なく古巣へ舞い戻り、再び元の平静な日々が始まったのだった。

「災い転じて福」となしたTorty (トーティ)
トーティ生年月日:2006年4月。バディ、ホリー(下記参照)と共に通い猫フリーダから奪い取ったサビ子猫。当初は三匹とも手放すつもりであった為、とりあえず体毛の色柄から安直に「トーティ(Tortoiseshellの略称)」と命名。トーティは兄弟姉妹の中で一番小さかったが気性の荒さにかけては他の二匹に負けていなかった。手を伸ばすと必ず威嚇し人間には決して体を触らせず、時には素早いジャブとフックが飛んで来ることもあった。保護したのっけから鼻水、涙目がひどく、わずかに喘鳴が聞かれたりしたが食欲は旺盛で他の二匹と同様子猫らしく活発に動き回り、メシ時に他の二匹を蹴散らし餌を横取り/独り占めすることなどもさして珍しくなかった。捕獲から二ヶ月あまり過ぎて健診と予防接種のため三匹まとめてかかりつけの動物病院へ連れて行った際に「子猫達の引き取り手を探している」と話したところ「このサビ猫はこちらで何とかしましょうか?」との有り難い言葉が返ってきた。その獣医によると、病気の子猫は思いの外貰い手がつきやすいらしい。(後になっていささか疑わしい話だと思ったがその時は)これ幸いとトーティのみをそこに置き去り、安堵の思いで動物病院を後にしたのが兄弟姉妹三匹一緒の最後の日となった。後日獣医から「トーティはダブリンに住む若い家族に見初められ貰われていった」と聞かされたが、それが事実ならまさに怪我の功名というやつである。
小心者Buddy (バディ)
バディ生年月日:2006年4月。ホリー(下記参照)、トーティ(上記参照)と共に通い猫フリーダから奪い取った短毛黒の雄猫。胸元にかすかな白毛あり。当家に迎え入れるつもりはなかった為、はじめ仮称で Blackie と呼んでいたが後に Buddy へ改名。同居人がアメリカのミュージシャン"バディ・ホリー"のファンであり、二匹同時に命名する機会を得たことからバディにはこの名前が与えられた。
先の子猫捕物帳(猫屋敷になった経緯その4参照)にも書いたが捕獲の際、姉妹のホリーとトーティが危険を物ともせず無防備に餌を漁る間、(バディは)裏庭の片隅の草むらに身を潜めて硬直していた警戒心の強い臆病者である。隔離部屋で生活し始めた頃も人間が姿を現すや否や真っ先に家具の下に潜り込み、人が室内にいる間は決して姿を見せなかった。(偶に尻尾の先端をチラリとのぞかせていた事があったが。) それでも日が経つにつれ我々になれてきたのか、腰を落として食物を差し出すとこちらへ近付いてくるようになった。しかしながら、人間との接触に慣れさせようと頃合いを見計らって何度か頭や背中に触ってみたところ、バディは毎回はじかれた様に身をかわしてその場から逃げ去っていった。
そんな調子だったので(健診と予防接種のため)子猫達を動物病院へ連れて行くのに手間取っていたが、ある日ふと食事中の彼らがいかに隙だらけであるかに気づき、同居人と二人で三匹の子猫達を騙し討ちにした。獣医に連れて行った際、他の二匹がうるさく鳴き続けているにもかかわらずバディだけは終始無言のまま目を見開きブルブル震えていた。
隔離生活から解放されて間もなくバディは突如として飼い主の足元に体を擦り付けてくるようになった。但しこちらが突っ立っている場合のみで、体を撫でられると奴は相変わらずギョッとして素早く飛び退き、いわんや持ち上げられることは断じて許さなかった。その点は現在でもさほど改善されていない。(なぜか彼は飼い主がソファかベッドの上にいる時だけは撫でさすられるのを喜ぶようになったが。) オスの為か、エルモを除く他の内猫達には程なくして馴染み、特にブッチとはよく取っ組み合いをしたり毛繕いしあったり二匹で寄り添って寝たりしていた。また、雄猫の例に洩れず、徒党を組んでメスを追いかけ回すことをし始め、バディは中高年になった今でも偶にそれを楽しんでいる。
成猫になってバディがどれだけ臆病で神経質かを見せ付けられた出来事がいくつかある。アイヴス(後に紹介)が加わって10日程したある夜、ソファの上で眠っているバディの背中を撫でようと軽くヤツに触れた瞬間、バディは肝を潰して40センチほど垂直に跳び上がり、その過程で器用にも筆者の手の甲に爪を立てて血管に大穴を開けたのだった。血まみれの手を押さえながらこちらが唖然としている間に奴はどこかへ姿を消してしまった。それより少し前に子猫のアイヴスがソファの上でちょろちょろしていたのでバディは恐らくアイヴスに突かれたとでも思ったのだろう。また同じ頃、傍らに座るバディの頭を何気無く見下ろすと、なんと天辺のど真ん中に十円ハゲ(いや実際にはそれより若干大きく"2ユーロはげ"と言うべきか) を発見!それまで目に付かなかったため外傷だろうかと思い、その部分を観察してみたがそんな風ではない。(バディは)毛繕いを怠り、常に神経を尖らせている様子だった事からアイヴス加入による強度のストレス(恐れ?)が円形脱毛症を誘発したものと推測される。もう一つ二つ彼の小心さを示す例がある。こちらが二階の部屋で掃除機をかけ始めると階下の居間にいるにもかかわらずバディは毎回泡を食って闇雲に階下中を逃げ回り、挙句の果てに行き詰まって二階へ駆け上がって来る。わはは あと、飼い主がたった一晩でも家を空けて戻ってくると(ホリーも同様だが)バディは決まってどこかに身を隠し一、二時間姿を現さない。よそ者が家に来た時と全く同じ行動で、これはいつまでたっても変わっていない。
そんな風に書くと、バディは飼い主に懐かない猫のような印象を与えるかもしれないが決してそうでは無く、ソファに座って隣のスペースをぽんぽんと叩けば大抵の場合やって来るし、筆者の腹の上でくつろぐヤツの尻を脇へ押しやっても身じろぎもせずその場に寝転がっていたりする。ただ、未だにこちらの顔色をうかがいながら近寄って来たり、熟睡している時以外は触られると体をびくっとさせたりする事も少なくない。
バディは生まれてこの方我が家の裏庭と屋内しか知らないせいか、窓や玄関の扉が開いても全く興味を示さない反面、どんなにかすかでも家の中の不可解な音を聞くと瞳孔全開で耳をそばだてる。垂直跳びを十八番[おはこ]とし何があろうが一切音声を発しない一風変わった情けないビビり屋猫である。
永遠の半野生Holly (ホリー)
ホリー生年月日:2006年4月。バディ、トーティ(上記参照)と共に通い猫フリーダから奪い取った短毛で灰がかったサビ猫。尻尾に縞模様あり。ロシアンブルーの血が混じっていると思われるが、飼い主への愛着は極めて薄い。当家に迎え入れるつもりはなかった為、はじめ仮称で Smokey と呼んでいたが後に Holly に改める。バディ編の中でも説明したが、二匹同時に命名することになった同居人がアメリカのミュージシャン"バディ・ホリー"のファンであったため、バディの姉妹の彼女には「ホリー」の名前が与えられた。
突然拉致されて隔離部屋で生活し始めた頃、窓の外に母猫の姿をみとめるたびホリーは助けを求めるようにニャーニャーとうるさく鳴いていた。とりわけ気性が激しいわけでも物怖じするわけでもなかったがバディと同様、体を撫でられることを嫌悪し持ち上げられることを絶対に許さない厄介な子猫だった。(今でも持ち上げる事など論外である。) 現に、避妊手術のため動物病院へ連れて行く際、家の中に罠(捕獲用の檻)を仕掛けて捕らえなければならなかった程のツワモノである。それでも我々(人間と先住猫達)と共同生活を始めたばかりの頃、どうした弾みか飼い主の膝の上で昼寝をしたり頭や体を撫でさせるなど、我々に対して随分リラックスした態度を見せていた時期があったがそれも長くは続かず、成長して知恵が付いたのか我々に近寄って来ることさえ滅多になくなってしまった。但し、極まれにホリーはソファでくつろいでいる飼い主の傍らにやって来て鼻をクンクンさせ我々を驚かせることがある。
さらにホリーはここ数年間、実に奇異で不合理な摂食行動(?)で我々を閉口させている。しかもそれ(ホリーの挙動)は半年おきくらいに変わり、その都度飼い主は給餌方法の調節を強いられている。その振る舞いの異様さゆえ、我々は最初の頃(ホリーは)どこか具合が悪いのか、或いは誰かに怯えているのかなどと考えたが、そのどちらの可能性も非常に低く原因は今もって分からない。彼女の行動やこちらがそれにどう対処したかをいちいち書くのは止めておくが、大まかに説明すると下記の通りである。他の猫達と一緒にメシを食わず餌場から逃げ出して別の場所で給仕人(奉公人とも言うひひひ)を待つ。鼻先に餌皿を置かれても人が見ている間は飯に手をつけないが、周囲に人(と猫)の気配がなくなるとがっつき始める。また別の折には、目の前に餌の皿を置かれてその場から逃走するのでメシはいらないのかと思いきや、餌場で他の猫達の残飯を食い尽くした後、最初に出されたてんこ盛りの餌を残らず平らげ御代わりを催促する、とまぁこんな調子でここ何年かホリーは日々飼い主を振り回している。ただ、一つだけ恒常的なのはホリーの圧倒的な食欲で、ヤツは毎食時どか食いをして我々を驚嘆させるのである。(ホリーは我が家で一番の大飯食らいでありながら、どういうわけかエルモほど太っていない!) 
ホリーは今でもやはり体に触れられるのを極端に嫌う。大抵逃げられるのだが、偶に頭や背中を撫でさせたとしても彼女は体を小刻みにひきつらせ至極不快そうな顔をする。触るどころか奴の側に近づくだけで威嚇されることも珍しくない。またバディと同様、玄関の外で人の気配がすると閃光のごとく一瞬にして消え失せ、客のいる間は絶対に姿を現さない。そして開いた窓や玄関、勝手口の扉にはまるっきり無関心な変わり者の猫でもある。
いつの頃からかホリーはアンジーやバディ(!?) を小突きながらしつこく追いかけ回して楽しむようになったばかりか、常習的に本で爪を研いだり小便を撒き散らしたりと、何ともタチの悪い事ばかりやって住人達をとことん困らせている。受け入れから8年経っても未だに我々はホリーにとって"誘拐魔"だという事なのだろうか。<2014年4月 記>

 

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