旅行中または前後に出くわしたトラブル 〔旅のインシデント〕
ベネチアとプラハで冷や汗
今回はヒヤッとした話二本立て。
右見て左見て手を上げて
例によって古い話だが、2000年9月イタリア3都市周遊旅行で日没後ヴェネツィア入りし、ヴェネツィア・メストレ駅近くのホテルにチェック・イン。翌朝、鉄道を使ってヴェネツィアの中心街 (サンタ・ルチア駅) へ行くためメストレ駅に向かう途中のことだった。緩いカーブの道路で信号のない横断歩道を渡ろうと左右を確認(正確には右➝左)し再度右側を見た後に何歩か足を踏み出したその時、視界の左端に突然何かが飛び込んできた。一瞬後、急ブレーキの音と共に左肩に背負っていたリュックサックを軽く押されたような感触を覚えハッとしてその方向を見ると目の前には大型観光バスが…。(うかつにもイタリアでは右側通行であることをすっかり忘れていたのだ。) 一瞬凍りつき身動きできなかったがそのバスの罵声じみたクラクションの音にせき立てられ慌てて道をあけてどうにか事なきを得た。急停車したバスと筆者の間の距離はまさに20センチ足らず。一歩間違えば車に轢かれたぺしゃんこカエルになるところであった。また、同行していたアイルランド人は哀れにもしばらく口がきけないほど青ざめていた。観光バスの乗客にとってもそれこそとんだ迷惑冷や汗モノだったに違いない。反射神経が抜群に良かったあの運転手に今でも感謝しきりである。それにしてもあんな見通しの悪そうな道を怒涛のごとく走るのはいつもの事なのだろうか…。
伸びる手
続いて2005年5月プラハ(チェコ)での出来事。その日の午前中、友人と二人で旧市街にある観光名所をいくつか巡り正午近くに地下鉄で新市街の中心駅ムゼウム(Muzeum) へと向かった。A線とC線が交わりプラハ本駅から一つ離れたムゼウム駅に到着し、電車を降りて構内を抜け、ヴァーツラフ広場方面への出口付近で満面の笑みを浮かべながらケバブ・サンドウィッチをほおばる路上生活者を眺めながら階段を上り始める。地上近くまで来たところでふと友人の方を見るといつの間にか彼の背後に一人の男が…。なんと奴は友人が背負ったリュックサックのポケットに手をかけていた。筆者が友人に向かって大声を上げると、その男は素早く手を引っ込めて何事もなかったかのように階段を上がっていった。(筆者は友人の真横に並んで歩いていたのだが、件の男が近寄って来たことにまるで気づかなかったし、友人も何が起こっているのか全く分からなかったようだ。)
『いやあ、こんなに間近でスリを見たのは初めてだ。すぐ側に人がいようが(目撃されようが)何だろうがお構い無しだな。』などと感心している場合ではないか…。
友人は直ちにリュックサックを調べてみたがポケットのジッパーが半分開いていたものの幸い何も盗られた形跡はない。ホッと胸をなでおろし、地上に出て辺りを見回した時には、男の姿はとっくに消えていた。こうして危うくスリの餌食になるところを間一髪で逃れた我々はその後無事に新市街のとある“ぼったくり”バーにてチェコ産ビールを存分に満喫したのであった。